空色ヒッチハイカー

スリランカ旅行の直前に、成田空港の書店で何となく手に取り、旅に持って行った1冊です。

空色ヒッチハイカー (新潮文庫)

空色ヒッチハイカー (新潮文庫)

主人公は18歳の秀才な高校生、彰二くん。東大法学部生で財務省への入省が内定している彰一お兄さんをとにかく追いかけている彼が、突然いなくなったお兄さんを追って無免許で川崎から佐賀まで行ってしまうという話。
ちなみに「ヒッチハイカー」というのは彰二くんが道中でいろいろと人を乗せて、降ろしてというところに由来するタイトルです。

一番印象に残ったのは、佐賀まで追いかけてきた彰二に対して彰一が言う
「それ、誰が決めたんだ?」
という言葉。
財務官僚への道を捨てて、惚れた女の後を追って佐賀の農家に行ってしまった兄を連れ戻そうとしたときに発せられた言葉。

この言葉を聞いたとき、僕が思い出したのは「もったいない」という言葉。東大とか京大に行った、一流の学歴を持つ人間が、それらしい道〜たとえば大企業とか、中央省庁とか〜から外れた際に発せられる。
彼らの言う「もったいない」とは何が「もったいない」のか?

大企業で得られるはずの生涯年収よりも少ない金しか手に入らないだろうことか?
たくさんの人の上に立てなくなることだろうか?
名声やブランドを逸してしまうことだろうか?

確かに、金はないよりはあったほうがいいだろう。だが、金があっても、自分が楽しくないのであれば、それに何の意味があるだろうか。自分で決めて、あえてそれらしい道から外れたのであれば、人から「もったいない」などと言われる話ではないはずだ。

そもそも、「もったいない」などという言葉を発する人間は、他人を「もったいない」と言えるほど、「もったいなくない」人生を歩んでいるのだろうか。そんなことはないだろう。自分が中途半端で、他力本願だから、「もったいない」などと言うのだろう。本当にできた人間なら、人をどうこう言う前に、まず自分が何をできるか、ということを考えるはずだ。

彰一の潔さ、僕には本当にうらやましい。周りの声に流されてきた人生に踏ん切りをつけられるなんて。
残念ながら、僕にはそれほどの勇気はない。でも、環境、自分の能力のなさ、それらに嫌気がさし、苦しんでも、前を向いて行ければ、とは思う。エピローグの彰二くんみたいに一歩を踏み出されば...