就活のバカヤロー(★9点)

どうも、就職活動コンサルタントのおーたっちです(嘘)
id:algorithm氏のところで取り上げられていたので、買って読んでみました。

就活のバカヤロー (光文社新書)

就活のバカヤロー (光文社新書)

石田衣良「シューカツ!」三田紀房「銀のアンカー」と、最近就職活動を事例とした作品が多いが、やはり売り手市場だったことが関係しているんだろうか。そんな中、僕は59社落ちたわけですが。こないだ57社と書いたけど、さらに2社落ちていたことを思い出しました...
まず、福満しげゆきの帯のマンガがいい。就活の茶番っぷりをよく表していると思う。就活でしょっちゅう聞かれる言葉「コミュニケーション能力」ですが、誰もこの言葉の意味についてちゃんと教えてくれないっていうのはどういうことよ。言葉はきちんと定義して使いましょう。

中身もイタイ就活生、大学にとっての就活、企業にとっての採用活動、インターン、就職情報会社と盛りだくさん。取材もかなりしてあるようで、読み応えがある。

1. イタイ就活生
「これって俺のことじゃねぇか!」と思うところも... 就活を受験のようなものと捉えているというのには賛成。将来のことを考えるとか、そんなことは忘れて、とりあえず目の前の選考さえ通ればいいという気持ちになってくるんですよね。
資格不要説も賛成。大学生協が就職活動の時期になるとやたらTOEICを推すのは不安感につけ込んだ悪徳商法としか思えない。しかしながら乗ってしまう人がいるのは、あいまいで不透明なものが多い就活の中で、定量的で序列がつくモノに頼りたくなるからだと思うよ。
ただ、自己分析についてはちょっと異論が。確かに「電気のように明るい人間」だとかは論外だけど、将来どんな社会人になるか、自分がどのような価値観を持っているのか、ていうことを考えるのは自己分析じゃないのか。筆者もそのあたりのことが大切だというようなことは書いているんで、自己分析不要というのはおかしいだろう。

まあ、ともかく就活生そのものがかなりおかしいということで。

2. 大学にとっての就活
まず、学歴について。東大や早慶のような高学歴者が学歴差別のことを気にするのは、嫌味じゃなくて、単純な話、自分から学歴を引いたら何が残るのか、ということに自信がないだけだと思うよ。別に学歴が人柄を反映するわけじゃないし。
各大学の独自の取組みが面白い。法政大のマスコミ講座なんてすごいな。講座があるというだけじゃなくて、その内容が。日大や立命館の就活合宿とかやりすぎじゃないのか、と思うけど。
あと、「無意識下の就活」にはなるほど!と思った。慶應生は確かにすごいと思うけど、ゼミがそんなにすごかったのか。結局のところ、勝利の方程式を真似るんじゃなくて、人とのかかわりの中で、自分の人間性を磨くしかないっていうことか。東農大の研究室楽しそうだな。

3. 企業にとっての採用活動
ここに注目した情報は今までに見た記憶がない。各企業、そんなに就職人気企業ランキング気にしているのか(笑)
採用広告のウソ、NGワードとかは就活前に見ておきたかったなあ。各企業とも、結局は自分たちの魅力がわからなくて、安易な言葉に頼ってしまうのか。まぁ、そんなに各企業ごとに差があるとも思えないしね。
あと、人事の採用担当者についても記述があって面白い。面接官研修まであるとは、就職活動のあらゆる局面がビジネス化しているってことを如実に表していると思う。それから、決して高く評価されず、闘い続ける採用担当の皆さん、お疲れ様です。どうしょうもないやつもけっこういましたが(爆)、名古屋の鉄道会社のYさんとか、つぶれてしまった不動産会社のKさんとかは落とされたけど、いい人だったなあと今でも思っています。

4. インターン
インターン、そういえば応募一応していたなあ。普通に落とされましたが。
結局のところ、就職活動早期化の一端を担っているだけだったのか。まあ、あんまり地味な仕事させて会社に対する期待を裏切っても採用活動的にはマイナスだしね。

5. 就職情報会社
自分が就職活動に失敗したのは、かなりリクナビのせいだったんじゃないかと今思っています。リクナビに向かって企業説明会予約する、サイトの文章読む、これをやっているだけでかなり就職活動した気分になります。さらに企業説明会に出向くと、「こんなに就活がんばっている奴ほかにいないんじゃね?」とすっかり舞い上がってしまいます。こんな人間は僕だけでしょうが...
あんなに合同説明会やってたくさんの大企業*1を集めて、それでも大企業からはそれほど重視されていないってちょっとかわいそう。リクナビマイナビのおかげで就職活動うまくいった、なんて学生も一人もいないだろうし。選考上、リクナビマイナビを使わなくちゃいけないから仕方なく使っている、という人ばかりだろう。

6. 個人的なまとめ
結局のところ、就職活動の成否を決めるのは、人柄です。環境でも学歴でも資格でもなくて。筆者のおわりにも、かなり青臭い話が入ってましたし。自分という人間の価値観や将来像を描いて、それを胸張って言えるか、それだけでしょう。
例えば、僕自身は大手町まで電車乗車時間10分未満というところに住んでいます。北海道とか九州に住んでいる人にとってはうらやましい環境かもしれませんが、この環境が自分の勘違いを増長し、「スタンプラリーでもやっているのか!?」というような企業めぐりを展開していました。でも、あんなに参加したのに特に何を聞いたか今覚えていないところがほとんどです。環境を生かすも殺すも自分次第、です。
とはいっても、環境や学歴が自信を奪う、というのも事実。僕は東大院卒ですが、結局早慶入社者0という企業に入社することになりました。そこで同期の一部から言われた言葉
「なんでうちみたいなところ入ったの?」
「もっと夢のある会社に入れたんじゃないの?」
彼らは自分の選んだ会社を夢がなくてダメな会社だと思っているのだろうか。こういったコンプレックスって見ていて本当にイタイ。
もっと、みんなが自分の価値観とかに自信を持って、堂々と生きられるようにならないのかな(自分含む)

*1:転職市場であれだけのブランド企業はそろえられません!