時刻表2万キロ

宮脇俊三氏の名著で、鉄道文学のバイブルと言われるこの本をようやく読むことができました。
いやあ、すごい。

昭和55年あたりの、宮脇さんの国鉄乗りつぶし最終章を叙述したこの本だけど、改めて当時は路線が多かったんだなあというのを思い知らされた。この時期に乗りつぶしやっていたら相当大変だったろう。でも、さぞ楽しかっただろう。美幸線とか矢部線とか乗ってみたかったなあ。
あと、急行列車や夜行列車がたくさん出てきているのも旅情をそそらされる。東北新幹線開業の前には「ゆうづる」「津軽」とかがバンバン運行されていたんだなあ。そのときよりも速く移動ができるようになったけど、旅情はちょっと失われたのかな。この時代の旅もしてみたい。

面白いのは、宮脇さんの鉄道・乗りつぶしに対する姿勢。執念を持って一心不乱に乗りつぶしているように見えるけど、なぜか軽い。変に気負ったところがない。それはさらりとした文体によるものかもしれないけど、そう思わせるところがすごい。鉄道ファンが鉄道について文章を書くとこだわりとか信念が反映されすぎてコテコテになるんだけど、そんなところはない。もちろん、宮脇さんの主張は文章中に出てくるんだが、そういったところでも、読者に「そうか」と思わせるぐらいで、押し付けがましいようには感じられない。例えば、観光客誘致の駅名改称への苦言のところとか。
鉄道を愛し、それを自然にさらりと伝えられる宮脇さん、本当にすごいなあ。

最後に一言。タクシー使いすぎです(笑) 大館から大更まで急行列車を追いかけるとかありえません。本当に惜しげもなくタクシー使うんだから。