鉄道ひとつばなし2(★8点)

鉄道ひとつばなし 2 (講談社現代新書)

鉄道ひとつばなし 2 (講談社現代新書)

「鉄道ひとつばなし」の2巻目が出ていたので読んでみました。
原さんは鉄道ライターが本業ではなく、明治学院大学で日本政治思想史の教授をやっている人なんで、その側面がかなり反映されています。一言で言ってしまうと、懐古主義の色が強い。
客車列車が走り、スピードが遅く、無駄が多い国鉄時代をよきものと考え、スピード主義の今のJRに対してはかなり批判的な立場。特に昔の駅そばに対する愛情はすさまじく、今のNRE*1に対しては憎悪の念すら抱いているのではないかと思うほど。

僕は国鉄時代の記憶はないんで、今と国鉄のどちらがいいかなんて比較はできないけど、確かに今のJRはちょっと効率主義入りすぎじゃないかと思うんだよね(^^) 本州3社は完全な民間企業なんで、利益の増加を死に物狂いで達成しなきゃいけないんだろうけど。でも、JR東日本の流通部門はちょっとやりすぎじゃないだろうか。駅ビル、エキナカ、そば屋にラーメン屋、あらゆる駅に関係する商業施設を自社でまかなおうとしている。
個人的には、便利だと思うけど、エキナカは嫌いです。エキナカができることで駅外の商業施設にはどうしても人が行かなくなってしまう。そのことは街の魅力の低下につながり、来街者の減少という結果を引き起こすと考えられる。そうなると、鉄道を利用して移動する人は減少するのではないだろうか? 短期的にはあいているスペースの有効活用で収益増大につながるけど、長期的な視点で見ると、かならずしも収益増大につながらないんじゃないのかな?

かなり話が脱線しました(^^ゞ
この本で面白いなと思った章は「日本の鉄道全線シンポジウム」「鉄道趣味界の「四天王」」。前者は全国各地の鉄道路線が出席し*2、原さんを議長にして今の日本の鉄道について侃侃諤諤の議論を展開するというもの。各社の自己主張が、(妙な)方言で書かれていて、面白い。西鉄天神大牟田線「うちのところの「雑餉隈」な、絶対に変えんばい」というのには笑った*3
後者は、宮脇俊三種村直樹川島令三嵐山光三郎の4氏の文体を、原さんがまねて比較したもの。かなり特徴が出ていると思います。そして、宮脇さんのはやっぱり独特だなと思った。国鉄完乗を成し遂げたものの、全く鉄道マニアぶりっがなく、沿線の風景を情緒豊かな文体で描いていくのは、記録を超えて文学の世界に入っているなと思った。まだ「時刻表2万キロ」読んでないんで、早く読まないと(笑)。川島令三はやっぱりウザイです(爆)

鉄道について詳細に書くというよりも、鉄道の裏にある時代背景や人々の思想について考察を加えているというこの本。純粋な鉄道好きの人にはあまりすすめられないけど、鉄道を文化として捉えるということも必要かなと思います。でも、懐古主義が強いのはちょっと辟易するところもあるけどね。

*1:あじさいとか

*2:東海道新幹線が欠席ってw

*3:JR鹿児島本線雑餉隈が「南福岡」に駅名変更したことに対してのコメント