行ってきました研究出張。
今回は1泊2日で、2日目は河川が増水し、粘土などが大量に流れていたので水は取らなかったんで楽だったんですが、1日目に本当にうっとうしいことがありました。

いつもどおり採水をします。今回は岡山県東部から兵庫県西部にかけて。
そして、採水をしたら旅館に入ります。そして、ろ過

ろ過をする際、多くの実験器具が必要なので、それを部屋に持ち込みます。ボックスに入れて持ち込むので、見ただけでは実験器具だとはわかりません。
この日は調査が早く済み、夕食まで時間があったのでろ過を夕食前に始めました。そして、そのセットをしたまま夕食へ。
で、その夕食の間に荷物の量を怪しんだ旅館の人が部屋に入り、ろ過のセットを見てしまったわけですよ。アスピレーターからホースが何本も出て、何本もフィルターホルダーがついている様子を見てしまったわけですよ。その光景は、非化学の人間が見たら「なんだこれ!」と思わずにはいられないものです。

そして、夕食中旅館の人から
「何か作ろうとしているようなんですが、お部屋でそのようなことをされては困るんですが」
と言われる。

結局部屋に組み立てたろ過セットは片付け、旅館の人から空いている家族風呂でやるよう言われ、そちらにセットを組み立てなおし、ろ過はできました。

私は旅館でろ過やるなんて非常識で、こんなことを何回も何年もやり続けていることが信じられないのですが、教員や他の学生(2人しかいないが)は違うようです。
「断りもなく部屋に入るなんておかしい」
「ろ過をやるんであってものを作ろうとしているわけじゃないのに」
「化学アレルギーなんでしょうね」
「旅館に迷惑かからないように配慮しているんだからいいんじゃないか」
「こんなことで騒ぐなんて」
「こっちが客なのに」
「こんなんで客商売やっているなんておかしい」

宿泊する旅館には「ろ過をする」とは伝えていないようですが、一応ビニールシートを部屋に引いたり、隣に宿泊客がいない部屋を用意してもらう*1などしているみたいです。旅館に「ろ過する」と一言断っていないのは問題だけどな。

そりゃあね、無断で部屋に入ることは宿泊客にはプライバシー権があるわけだから、問題行動だとは思うけど、そのあとの悪態のつきかたが目に余る。
自分たちはあくまで正しいことをしているという意識の過剰さがこういうことを言わせているんでしょうが、自分たちがやっていることが旅館の通常の使用目的の範囲から離れているということがわからないんでしょうか。
旅館でろ過をやるということがたいしたことないと思っていることがありえない。そして、非化学の人間にはろ過をやるのも合成をやるのも見え方は大してかわらないということが見えていないというのも変。それを「化学アレルギー」なんて言葉で嘲笑するのは論外だ。それから、迷惑をかけなければ大丈夫だという考えも自己中心的過ぎる。
前回宿泊した三原の旅館でろ過をしたとき、アスピレーターから水があふれ、洗面所の床を水浸しにするということがありました。もちろん水は吸い取り、原状回復をはかりました。しかし、原状回復すれば何をしても許されるのか? ガラスを割って、それを弁償してもガラスを割ったという罪は帳消しにならんだろ。

科学者が日常やっているということは一般からすれば相当変わっているということが認識できていない。
ろ過をしたあとは硝酸を水に添加します。これは液性を酸性にすることで水の中の生物の活動をストップさせ、溶存物質の濃度が変化しないようにするためです。で、その硝酸は12mol/Lのやつをフィルムケースみたいなやつに入れて持っていくのですが、12mol/Lですよ。この濃度の硝酸は劇物ですよ。日常的に塩酸とか硝酸使っていると感覚が薄れていくのでしょうが、こういった薬品は化学者にとっては当たり前でも、劇物です。
だから、ある程度しっかりした実験室で研究活動を行っているんだけどなぁ。

それから、自分たちが「お客様」だと思いすぎだ。
まわりの人の好意、国民の税金によって自分たちが研究できているということを決して忘れてはいけない。そして、好意を当然だと思ってはいけない。確かにサービス業の人間がサービスをするのは当然だが、今回の発言からはそれ以上に自分たちが偉いと思っているような様子が伺えた。

あとの2人の学生は自分たちの考えの方が正しいようなことを私に対して思っているようだけど、それは違うと思うんだけどなあ。まあ、2人がそう思うんならこの考えが研究室のメインの考えってことになるんですけどね。

この研究室は今年でおさらばすることが決まっていますが、ここで卒論書かなきゃいけないのは本当に鬱。
せっかく未来に向かって生きていこうという希望が持ててきているのに、なぜそれをぶち壊そうとするのかね。この研究室は。

スプリング8での事故が妙に気にかかります。ベリリウム浴びて全身洗浄って… しかもわざわざ倉敷の川崎医大病院にまで搬送されているし。
科学者のやっていることは社会一般で想定されることから別世界だってことがわかるなあ。

*1:アスピレーターの音がうるさいからね